最高裁は、平成31年冒頭から矢継ぎ早に、家庭裁判所(家裁)の成年 後見制度に関する取扱いの改善に乗り出した。改善点は、次に述べる3事 項であるが、いずれも、成年後見制度利用促進基本計画の趣旨に則った改 善策である。とはいえ、従前から家裁に深く根付いていた財産管理中心主 義から身上保護重視主義への転換を意味するから、この意義は誠に大きく、 この家裁による運用の画期的な転換を心から歓迎したい。 |
第1の改善点は、被後見人本人の判断能力を判定するため、家裁に提出 される診断書等の改定である。 従来の診断書の様式は、もっぱら財産管理能力のみに着目した内容だっ たが、これを改訂して、理解力や意思疎通能力等日常生活能力を反映した 多岐的な判定項目となった。その上、付属書類として福祉関係者が作成す る「本人情報シート」をも提供してもらい、日常の意思決定の可否や介助の 必要性等生活状況が判断能力の判定材料として活用される仕組みとなっ た。この改善により、本人の意思決定が、より尊重される「保佐」、「補助」 類型の増加が図られ、また、柔軟な後見人選任も期待できる。 |
第2の改善点は、これまで後見人等の選任の供給源として専門職(主に 弁護士、司法書士、社会福祉士)が約70%を占めていたが、この度、最 高裁は全国の家裁に対し、「後見人にふさわしい親族等身近な支援者がい る場合、本人の利益保護の観点から親族らを後見人に選任することが望まし い。」との考え方を提示した。この方針は、市町村に設置予定の「中核機 関」による親族後見人支援の実施を前提としているが、この改善が実施さ れたら、現在の専門職中心の後見人選任の流れが大きく変化し、後見人選 任のミスマッチも減少することが期待できる。 |
第3の改善点は、後見人に対する報酬の見直しである。 現在までの後見人の報酬は、本人の財産額に応じて決められていたが、 この度最高裁は全国の家裁に対し、本人の財産から支払われる報酬を業務 量や難易度に応じた金額にするよう促す通知を出した。この改善が実施さ れたら、「後見人は財産管理だけで、報酬に見合う仕事をしていない。」と の利用者からの不満は薄らぐと考えられる。 以上の改善が軌道に乗るまでは、かなりの紆余曲折が予想されるが、待 ちに待って打ち出された家裁の改善策であるから、家裁をはじめ、市町村 その他の関係者が協力しあって、是非とも、この早期実現を期待したいもの である。 |